
居酒屋を開業するにあたって、最初に直面する大きな課題が厨房機器・設備の選定と初期費用です。
「どんな機器をそろえればいいのか」「全部でいくらかかるのか」「うちの業態にはどのスペックが必要なのか」――これから居酒屋を開業しようとするオーナーなら、誰もが頭を悩ませるテーマではないでしょうか。
居酒屋の厨房はカフェやラーメン店と異なり、焼き物・揚げ物・煮物・刺身・ドリンクと多品目を同時に調理・提供することが求められます。そのため、機器の選定を誤ると調理が回らず、ピーク時の提供遅れや売上の機会損失に直結してしまいます。
この記事では、居酒屋開業に必要な厨房機器・設備の完全リストから、業態タイプ別の選び方、費用相場、初期コストを抑えるコツ、営業許可の基準まで徹底解説します。
特に、中古厨房機器をうまく活用することで開業資金を大幅に節約できるという点にも触れていますので、資金を少しでも節約したい方はぜひ最後までご覧ください。
居酒屋の厨房機器選びが開業の成否を分ける理由
居酒屋は、飲食業の中でも「多品目×高回転×酒類提供」の三拍子が揃った独特の業態です。カフェのようにドリンク中心で回す業態とも、ラーメン店のように単一メニューを高速提供する業態とも、厨房設計の考え方が根本的に異なります。
一般的な居酒屋では、焼き鳥や刺身などの看板メニューに加え、揚げ物・サラダ・ご飯もの・デザートまで数十品目を同時にオペレーションします。さらに、生ビール・ハイボール・日本酒といった酒類の提供スピードが客単価と回転率を大きく左右するため、ドリンク提供の設備体制も軽視できません。
このような業態特性から、居酒屋の厨房機器選びは次の3つの経営指標に直結します。
厨房機器選びが影響する3つの経営指標
- 提供スピード:焼物器やフライヤーの処理能力が足りなければ、ピーク時に注文が詰まり、客離れの原因になる
- 原価率:冷蔵・冷凍機器の容量不足は食材ロスを生み、適切な温度管理ができなければ廃棄コストが増える
- 人件費:食器洗浄機や省力化機器の有無がスタッフの作業負荷を左右し、少人数オペレーションの可否を決める
つまり、厨房機器の選定は単なる「買い物」ではなく、開業後の売上・利益・オペレーション効率を決定づける経営判断そのものです。限られた開業資金の中で最大のパフォーマンスを引き出すために、機器ごとの役割と優先順位を正しく理解した上で選定に臨みましょう。
【完全リスト】居酒屋開業に必要な厨房機器・設備一覧
居酒屋の厨房機器は、大きく「加熱調理機器」「冷蔵・冷凍機器」「ドリンク・酒類提供機器」「洗浄・衛生機器」「作業台・収納」の5カテゴリに分けられます。
まずは全体像を把握し、その上で自店の業態・メニュー・席数に合わせて必要な機器を絞り込んでいきましょう。以下は居酒屋に必要な厨房機器の全体マップです。
| カテゴリ | 主な機器 | 居酒屋での重要度 |
|---|---|---|
| 加熱調理機器 | ガステーブル・フライヤー・焼物器(グリラー)・炊飯器 | ★★★(最重要) |
| 冷蔵・冷凍機器 | タテ型冷凍冷蔵庫・コールドテーブル・冷凍ストッカー・ネタケース | ★★★(最重要) |
| ドリンク・酒類提供機器 | ビールサーバー・製氷機・酒燗器・ジョッキクーラー | ★★★(最重要) |
| 洗浄・衛生機器 | 二槽シンク・手洗い設備・食器洗浄機 | ★★☆(必須〜推奨) |
| 作業台・収納 | ステンレス作業台・食器棚・吊り棚 | ★★☆(必須) |
カフェではドリンク調理機器の優先度が最も高くなりますが、居酒屋では加熱調理機器・冷蔵冷凍機器・ドリンク酒類機器の3カテゴリすべてが最重要という点が大きな違いです。それぞれのカテゴリについて、役割・選び方・費用感を詳しく解説していきます。
この章の目次
加熱調理機器(ガステーブル・フライヤー・焼物器・炊飯器)

居酒屋の厨房の中核を担うのが加熱調理機器です。居酒屋は焼き物・揚げ物・煮物を同時並行で調理する業態のため、加熱機器の構成がそのまま提供スピードとメニューの幅を決定づけます。
ガステーブル(ガスコンロ)
煮物・炒め物・鍋料理・お通しの仕込みなど、居酒屋の調理全般を支える基本装備です。バーナーの口数と火力が調理効率を左右するため、メニュー品数が多い店舗ほど複数口のタイプが必要です。都市ガスかプロパンかでガス種が異なるため、物件の契約内容を必ず確認してから選びましょう。
フライヤー
唐揚げ・串揚げ・フライドポテトなど居酒屋の定番メニューに欠かせない機器です。油の容量(リットル数)で一度に揚げられる量が変わり、揚げ物の比重が高い店舗では二槽式や大容量タイプがピーク時に有利です。油の劣化を抑える濾過機能の有無もランニングコストに影響します。
焼物器(グリラー)
焼き鳥・串焼き・干物・焼き魚など、居酒屋の看板メニューを支える中心的な機器です。下火式・上火式・両面式があり、提供する料理に合わせて選びます。焼き面のサイズと同時調理数がピーク時の提供能力を左右するため、想定注文数から逆算してスペックを決めましょう。排気・ダクトとの関係も要確認です。
業務用炊飯器
〆のご飯ものや定食メニューを提供する居酒屋に必要な機器です。業務用ガス炊飯器なら2〜5升に対応し、約30分で20人分以上を炊飯できます。小規模店舗でご飯の提供量が少ない場合は家庭用で代用できるケースもあります。
| 機器名 | 役割 | 新品価格の目安 |
|---|---|---|
| ガステーブル (ガスコンロ) | 煮物・炒め物・鍋料理など幅広い調理の基本装備 | 5万〜20万円 |
| フライヤー (ガス式・電気式) | 唐揚げ・串揚げ・フライドポテトなど揚げ物調理 | 5万〜30万円 |
| 焼物器 (グリラー) | 焼き鳥・串焼き・干物・焼き魚など焼き物調理 | 10万〜40万円 |
| 業務用炊飯器 | 〆のご飯もの・定食メニュー用の炊飯 | 3万〜15万円 |
冷蔵・冷凍機器(タテ型冷凍冷蔵庫・コールドテーブル・ネタケース)
多種多様な食材を扱う居酒屋にとって、食材の鮮度管理は味と安全の基盤です。刺身用の鮮魚から仕込み済みの煮物、冷凍ストックまで、温度帯の異なる食材を適切に保管できる冷機器の構成が欠かせません。
タテ型冷凍冷蔵庫
食材の鮮度を保ち、仕込みのストックを管理するために、どの居酒屋にも欠かせない機器です。冷凍・冷蔵一体型なら限られたスペースで効率よく保管できます。容量が不足すると仕込みが回らず、大きすぎると光熱費がかさむため、仕入れ量と店舗規模に合ったサイズ選びが重要です。
コールドテーブル(台下冷蔵庫)
天板を作業台として使いながら、下部で食材を冷蔵保管できる省スペース機器です。調理動線のすぐ下に食材を配置できるため、使用頻度の高い食材へのアクセスが速くなり、オペレーション効率が大幅に向上します。冷凍・冷蔵の組み合わせタイプも選べます。
ネタケース(冷蔵ショーケース)
刺身や寿司ネタなど、鮮度が命の食材を適温で保管しながら視認性よく陳列できる機器です。海鮮メニューが主力の居酒屋では必須に近い設備です。カウンター越しにネタを見せることで、お客様の追加注文を促す効果も期待できます。
冷凍ストッカー
冷凍食材やアイスクリーム、仕込み済みの料理をまとめてストックするための機器です。タテ型冷凍庫より大容量かつ低コストで導入できるのが特徴で、仕入れ頻度を減らしたい店舗やメニュー数が多い店舗に向いています。
| 機器名 | 役割 | 新品価格の目安 |
|---|---|---|
| タテ型冷凍冷蔵庫 | 食材・仕込みの保管。冷凍冷蔵一体型で省スペース | 20万〜50万円 |
| コールドテーブル (台下冷蔵庫) | 作業台と冷蔵庫を兼ねた省スペース機器 | 15万〜50万円 |
| ネタケース (冷蔵ショーケース) | 刺身・寿司ネタなどの鮮度保持と陳列 | 10万〜40万円 |
| 冷凍ストッカー | 冷凍食材・仕込み済み料理の大量保管 | 5万〜20万円 |
ドリンク・酒類提供機器(ビールサーバー・製氷機・酒燗器・ジョッキクーラー)
居酒屋の売上に占めるドリンクの比率は一般的に30〜40%程度と言われており、ドリンクの提供スピードと品質は利益率に直結します。特に生ビール・ハイボール・日本酒は注文頻度が高く、これらを快適に提供できる設備体制が顧客満足度の鍵を握ります。
ビールサーバー・チューハイサーバー
生ビールやチューハイは居酒屋での注文頻度が最も高く、提供スピードが顧客満足に直結します。設置場所はスタッフの動線と連動した位置に配置することが重要で、小規模店舗ではホール側に設置してドリンク担当の動線を短縮する事例も増えています。
製氷機
ハイボール・サワー・ロックなど氷を多用する居酒屋では、製氷機の能力が提供スピードを左右します。1日の製氷量(kg)を客数とドリンク数から見積もり、余裕を持った能力の機種を選ぶことが鉄則です。ピーク時の氷切れを防ぐため、貯氷量もあわせて確認しましょう。
酒燗器
日本酒の熱燗を安定した温度で素早く提供するための機器です。冬場を中心に注文が集中するため、複数本を同時に温められるタイプを選ぶと提供待ちを防げます。日本酒の品揃えを売りにする居酒屋では導入の優先度が高い機器です。
ビールジョッキクーラー
冷やしたジョッキで提供する生ビールは泡持ちがよく、最初の一杯の満足度を大きく高めます。ピーク時の提供数に合わせて収容ジョッキ数を選ぶのがポイントです。カウンター下に収まるコンパクトなタイプもあり、限られた厨房でも導入しやすくなっています。
| 機器名 | 役割 | 新品価格の目安 |
|---|---|---|
| ビールサーバー | 生ビールの冷却・提供。注文頻度が最も高い機器 | メーカー貸与が多い (購入の場合10万〜30万円) |
| 製氷機 | ハイボール・サワー用の氷を安定供給 | 15万〜40万円 |
| 酒燗器 | 日本酒の熱燗を適温で素早く提供 | 3万〜15万円 |
| ジョッキクーラー | ジョッキを冷却し、生ビールの品質を向上 | 10万〜30万円 |
洗浄・衛生機器(二槽シンク・手洗い設備・食器洗浄機)
衛生管理と作業効率を支える機器群です。保健所の営業許可取得にも直結するため、許可基準を満たす設備を最初から正しく選ぶことが開業スケジュールの遅延を防ぐポイントになります。
二槽シンク
食材洗い用と食器洗い用を分けて設置することで衛生基準をクリアします。保健所の営業許可取得にあたって設置が必須となるケースが多いため、見落とさないようにしましょう。槽のサイズや深さにも規定があるため、事前に管轄の保健所へ確認が必要です。
手洗い設備
調理場内に消毒装置付きの専用手洗いを設置することが営業許可の要件です。調理用のシンクとは別に独立した手洗いが必要になるため、設置スペースと給排水の位置を事前に確認しておきましょう。
食器洗浄機
居酒屋は小皿・グラス・ジョッキなど食器の使用点数が他業態より圧倒的に多いため、食器洗浄機の導入効果が非常に大きい業態です。手洗いに比べて洗浄時間を大幅に短縮でき、高温洗浄による衛生管理の向上と人件費削減を同時に実現できます。席数20席以上なら導入を強くおすすめします。
| 機器名 | 役割 | 新品価格の目安 |
|---|---|---|
| 二槽シンク | 食材・食器の洗浄。保健所の営業許可に必要 | 3万〜15万円 |
| 手洗い設備 | 調理場内の専用手洗い。営業許可に必要 | 1万〜5万円 |
| 食器洗浄機 | 大量の食器・グラス・ジョッキの洗浄を効率化 | 20万〜50万円 |
作業台・収納(ステンレス作業台・食器棚・吊り棚)
地味ながら厨房の作業効率を大きく左右するのが作業台と収納です。居酒屋はメニュー数が多いぶん使用する食器・調理器具の種類も多くなるため、整理整頓と動線を意識した収納計画が欠かせません。
ステンレス作業台
仕込み・盛り付け作業のスペースを確保する基本設備です。ステンレス製は耐久性と衛生面に優れ、清掃もしやすいため業務用の定番です。下部に棚や引き出しが付いたタイプを選べば収納力も高まります。シンクやコンロとの高さをそろえると調理の流れがスムーズになります。
食器棚・吊り棚
多種多様な食器や調理器具の整理整頓と、ほこり・害虫からの保護を担います。保健所の基準では扉付きの収納が求められるケースが多いため、オープンラックだけでなく扉付きの食器棚を用意しましょう。壁掛けの吊り棚を活用すると、床面積を圧迫せずに収納スペースを確保できます。
| 機器名 | 役割 | 新品価格の目安 |
|---|---|---|
| ステンレス作業台 | 仕込み・盛り付け作業スペースの確保 | 3万〜20万円 |
| 食器棚(扉付き) | 食器・器具の保管。衛生基準の要件 | 3万〜15万円 |
| 吊り棚 | 壁面を活用した省スペース収納 | 1万〜5万円 |
業態タイプ別|優先すべき厨房機器の違い
「居酒屋」と一口に言っても、焼き鳥業態・海鮮業態・創作ダイニング・小規模立ち飲みでは看板メニューも厨房の使い方もまるで異なります。前章の厨房機器リストの中から、自店の業態タイプに合わせてどの機器に予算と優先度を置くべきかを整理しましょう。
焼き鳥・串焼き居酒屋
焼き鳥・串焼きが看板メニューの居酒屋では、焼物器(グリラー)のスペックと排気設備が最重要です。ピーク時に何本の串を同時に焼けるかが提供スピードと売上を直接左右するため、焼き面のサイズ・火力・同時調理数を妥協なく選定しましょう。
炭火焼きにこだわる場合は排煙ダクトの設計・工事費が大きくなるため、内装工事と一体で計画する必要があります。一方、遠赤外線タイプのガス式グリラーであれば煙やにおいを抑えつつ炭火に近い仕上がりが得られ、排気設備のコストを下げられるメリットがあります。
海鮮・刺身メインの居酒屋
海鮮・刺身を主力とする居酒屋では、ネタケース(冷蔵ショーケース)と冷蔵庫の容量、製氷機の能力が最重要になります。鮮魚は温度管理のわずかなミスが品質と安全性に直結するため、冷蔵設備には十分な投資が必要です。
刺身の盛り付けに使うフレークアイスを大量に消費するため、製氷機はキューブアイスだけでなくフレークアイス対応の機種も検討しましょう。加熱調理機器は焼き鳥業態ほど大型が必要ないケースも多く、その分の予算を冷機器に回せます。
創作・ダイニング居酒屋
多彩な創作料理を提供するダイニング居酒屋では、スチームコンベクションオーブン(スチコン)の導入優先度が上がります。蒸す・焼く・煮る・温め直すなど1台で多機能をこなせるため、メニューの幅を広げつつ調理スタッフの負荷を軽減できます。
席数25席以上で大量調理が必要な店舗では特に効果が大きい機器ですが、本体価格が50万〜150万円と高額なため、中古品やリースの活用も含めて導入を検討しましょう。
小規模居酒屋・立ち飲みスタイル
10〜15席程度の小規模居酒屋や立ち飲みスタイルの店舗は、厨房スペース自体が非常に限られています。1台で複数の役割を兼ねる機器を優先的に選ぶことが、省スペース厨房を成立させる最大のポイントです。
代表的なのがコールドテーブル(作業台兼冷蔵庫)やアンダーカウンター型の製氷機です。フライヤーやグリラーも卓上型のコンパクトな機種を活用し、限られた厨房面積でもオペレーションが成立するレイアウトを設計しましょう。炊飯器も家庭用で十分まかなえるケースが多い業態です。
居酒屋の厨房機器選びで失敗しない5つの判断基準
必要な機器の種類がわかっても、「どのスペックが必要か」「新品と中古どちらが良いか」など、実際の選定では判断に迷うポイントが多くあります。ここでは、開業後に「機器選びを間違えた」と後悔しないための5つの判断基準を解説します。
この章の目次
メニュー構成から必要な機器と台数を絞り込む
厨房機器選びの第一歩は、提供メニューの構成を先に決めることです。焼き物中心なのか揚げ物中心なのか、刺身を出すのか、ご飯ものはあるのか――メニューの軸が定まらないまま機器を選ぶと、オーバースペックで無駄な出費になったり、逆に能力不足でピーク時に調理が回らなくなったりします。
メニュー構成が固まったら、各メニューに必要な調理工程を洗い出し、「この工程にはこの機器が何台必要」という形で機器リストを逆算していきましょう。
席数とピーク時の提供数から容量・スペックを決める
機器の容量やスペックは、大きすぎても小さすぎても経営上のリスクになります。容量が大きすぎると初期費用と光熱費がかさみ、限られた厨房スペースを圧迫します。逆に小さすぎると、ピーク時に提供が追いつかず顧客満足度を下げてしまいます。
席数別の容量選定の目安
- 20席以下の小規模居酒屋:卓上フライヤー、小型グリラー、2口ガスコンロ、製氷機25kg/日程度
- 20〜40席の中規模居酒屋:床置型フライヤー、中型グリラー、3口以上ガスコンロ、製氷機45〜65kg/日程度
- 40席以上の大規模居酒屋:大容量フライヤー(二槽式も検討)、スチコン導入検討、製氷機95kg/日以上
あくまで目安のため、実際には1時間あたりの最大提供数を想定し、その数字に対応できるスペックを選ぶようにしましょう。
ガス種・電気容量・給排水を物件契約前に確認する
厨房機器はガス種(都市ガス・プロパン)、電源(単相100V・三相200V)、給排水の位置によって設置できる機種が大きく変わります。これらの要件を確認せずに機器を発注すると、設置できなかったり、追加のインフラ工事で想定外の費用が発生したりするトラブルが起こります。
居酒屋はフライヤー・焼物器・製氷機など消費電力やガス容量の大きい機器が多い業態です。物件のガス供給量と電気の契約容量が導入予定の機器に対応できるかを、物件契約前の段階で必ず確認しましょう。
搬入経路・設置スペースを採寸してから機器を決める
厨房機器選びで最も多い失敗の一つが、サイズを十分に確認せずに購入してしまうケースです。厨房に置けるサイズでも、店舗の入口・階段・エレベーターを通らず搬入できないというトラブルは少なくありません。
特にタテ型冷凍冷蔵庫や食器洗浄機など大型機器は、搬入経路の幅と高さを事前に採寸しておく必要があります。設置後に機器の背面や側面に放熱スペースを確保できるかも、機器選びの段階で見落とさないようにしましょう。
新品・中古・リースを機器の役割ごとに使い分ける
「新品と中古、どちらを選ぶべきか」は機器の役割によって判断が分かれます。
焼物器・フライヤー・ビールサーバーなど、売上や味に直結する主力機器は、状態の良い高年式の中古品か保証付きの中古品、または新品を選ぶことをおすすめします。主力機器の不調はピーク時の提供遅れやリピーター離脱に直結するためです。
一方、シンク・作業台・食器棚・吊り棚など、性能差が味に直結しにくい裏方機器は、中古品とのコストパフォーマンスの差が非常に大きい領域です。同じ機能であれば中古品を選ぶことで、浮いた資金を主力機器や運転資金に回せます。
つまり、「お客様の体験に直結する機器」には予算を厚めに、「裏で機能する機器」は中古でコストを抑えるというメリハリのある考え方が、限られた開業資金を最大限に活かすコツです。
居酒屋の開業費用と厨房機器にかける予算の目安
厨房機器の種類が決まったら、次に気になるのが開業全体でいくら必要なのかという資金計画です。ここでは、居酒屋の開業費用の相場と、厨房機器にかける予算の目安を解説します。
居酒屋の開業費用全体の相場と内訳
居酒屋の開業にかかる総費用は、規模や立地、業態によって異なりますが、一般的に800万円〜2,000万円程度が相場とされています。
カウンター中心の小規模居酒屋であれば500万円台で開業できるケースもありますが、30坪以上の本格的な居酒屋では内装・厨房機器だけで1,000万円を超えることも珍しくありません。以下は主な費用項目の内訳です。
| 費用項目 | 目安金額 |
|---|---|
| 物件取得費 (敷金・礼金・保証金・仲介手数料) | 100万〜400万円 |
| 内装・外装工事費 | 200万〜600万円 |
| 厨房機器・設備費 | 150万〜450万円 |
| 什器・備品費 (テーブル・椅子・食器・調理器具) | 50万〜150万円 |
| 開業諸費用 (許認可・広告・メニュー制作) | 30万〜80万円 |
| 運転資金 (3ヶ月分目安) | 150万〜400万円 |
注意したいのが運転資金の確保です。居酒屋は開業直後に客足が安定するまで時間がかかることも多く、家賃・人件費・原材料費・光熱費といった固定費を3ヶ月分以上カバーできる手元資金を用意しておくことが、早期閉店を避けるうえで重要です。居抜き物件の活用や中古厨房機器の導入によって初期費用を圧縮し、運転資金に回せる余力を作ることが開業成功の鍵となります。
厨房機器カテゴリ別の価格帯一覧
開業費用全体の中で、厨房機器・設備費が占める割合は約20〜30%が目安です。カフェと比べると加熱調理機器やドリンク機器の点数が多いぶん、厨房機器費の割合が高くなる傾向にあります。
| 機器カテゴリ | 新品価格帯の目安 |
|---|---|
| 加熱調理機器一式 (ガステーブル・フライヤー・焼物器・炊飯器) | 23万〜105万円 |
| 冷蔵・冷凍機器一式 (タテ型冷凍冷蔵庫・コールドテーブル・ネタケース・冷凍ストッカー) | 50万〜160万円 |
| ドリンク・酒類提供機器一式 (ビールサーバー・製氷機・酒燗器・ジョッキクーラー) | 28万〜85万円 |
| 洗浄・衛生機器一式 (二槽シンク・手洗い設備・食器洗浄機) | 24万〜70万円 |
| 作業台・収納一式 (ステンレス作業台・食器棚・吊り棚) | 7万〜40万円 |
全カテゴリを新品で揃えると、安く見積もっても130万円前後、こだわりの機器を揃えると450万円以上になることもあります。特に冷蔵冷凍機器の台数と焼物器のグレードによって総額が大きく変動するため、機器ごとに新品・中古を使い分けるメリハリが資金計画の鍵になります。
【席数別シミュレーション】20席の小型居酒屋 vs 40席の中型居酒屋
実際にどのくらいの費用がかかるのか、小型居酒屋(20席・12坪)と中型居酒屋(40席・30坪)の2パターンで厨房機器の構成と概算費用をシミュレーションします。
① 20席・12坪の小型居酒屋の場合
ガステーブル(2口)、卓上フライヤー、小型焼物器、台下冷凍冷蔵庫、台下冷蔵庫、製氷機(25kg)、二槽シンク、作業台、食器棚などを一式揃えた場合の目安は新品で約200万〜250万円です。中古品を活用すれば100万〜150万円程度に抑えられるケースもあります。
② 40席・30坪の中型居酒屋の場合
ガスレンジ(オーブン付き)、床置型フライヤー、中型焼物器、タテ型冷凍冷蔵庫、台下冷凍冷蔵庫×2、製氷機(65kg)、食器洗浄機、冷蔵ショーケース、二槽シンク、作業台、食器棚などを一式揃えた場合の目安は新品で約350万〜450万円です。中古品を活用すれば200万〜300万円程度まで圧縮できる可能性があります。
いずれの規模でも、中古品の活用で50万〜150万円以上のコスト削減が見込めます。次の章では、この厨房機器費用を具体的に抑える方法を解説します。
居酒屋の厨房機器コストを抑える4つの方法
厨房機器は新品で一式揃えると大きな出費になります。しかし、工夫次第で数十万〜数百万円単位のコスト削減が可能です。代表的な4つの方法を紹介します。
中古厨房機器で初期費用を30〜70%削減する
中古厨房機器は、新品と比べて30〜70%程度のコストで同等の機器を手に入れられるのが最大の魅力です。品質の高い中古品を選べば、開業後も問題なく使い続けられるケースがほとんどです。
居酒屋の厨房機器で中古が特に狙い目なのは、コールドテーブル・タテ型冷凍冷蔵庫・作業台・シンクなど、機能差が味に直結しにくい機器です。これらを中古で揃えるだけで50万円以上のコスト削減も十分に可能です。
中古品の導入で浮いた資金は、焼物器やフライヤーなど味と提供スピードに直結する主力機器への投資や、開業後の運転資金に回すのが賢い使い方です。購入の際は、動作確認済み・保証付きの商品を取り扱う専門店を選ぶと安心です。製造から数年以内の高年式品も流通しており、新品とほぼ変わらないパフォーマンスを発揮します。
居抜き物件の厨房機器を活用する
居抜き物件とは、前のテナントの内装や厨房機器がそのまま残っている物件のことです。前テナントが居酒屋や和食店だった物件であれば、焼物器やフライヤー、業務用冷蔵庫など居酒屋に必要な機器がそのまま使えるケースもあり、内装工事費・厨房機器費を大幅に削減できます。
一方で、前テナントがカフェやベーカリーなど業態が異なる場合、残置機器が居酒屋には不要なものばかりで活用できないケースもあります。業態の親和性を必ず確認し、導入前に専門業者の動作確認と衛生チェックを行いましょう。修繕費が発生する場合はその費用も含めて費用対効果を判断することが大切です。
補助金・助成金を厨房機器の購入費に充てる
返済不要の補助金・助成金は、開業資金の負担を減らす有効な手段です。代表的なものとして小規模事業者持続化補助金があり、厨房機器の購入費が補助対象となるケースがあります。
補助額は上限50万円〜200万円程度(申請枠により異なる)です。ただし、補助金は原則「後払い」のため、先に自己資金や融資で費用を支払い、後から補助金が入金される流れになります。申請には事業計画書の作成が必要なため、開業の6ヶ月〜1年前から準備を始めることをおすすめします。公募時期や条件は変わるため、最新情報は中小企業庁や各自治体のウェブサイトで確認しましょう。
リース契約で初期費用を抑える
リース契約を利用すると、初期費用をほぼゼロに抑えながら厨房機器を導入できます。月々の支払いが発生しますが、開業直後のキャッシュフローを守りたい場合に有効な選択肢です。
一般的なリース期間は5〜7年で、月額はリース総額の約1〜2%が目安です。ただし、総支払額は購入より1.2〜1.5倍程度割高になるため、長期的なコストを考えると「主力機器はリース、裏方機器は中古で購入」のように組み合わせるのが賢明です。また、リース機器は原則として途中解約ができないため、契約前に使用期間と経営計画をしっかり検討しましょう。
居酒屋の営業に必要な許可・届出と厨房設備の基準
厨房機器を揃えるだけでなく、保健所の営業許可をはじめとする各種許可・届出を取得しなければ居酒屋を営業することはできません。許可の基準は厨房設備の選定にも直結するため、物件契約や内装工事の前に必ず確認しておきましょう。
飲食店営業許可の施設基準と必要な厨房設備
居酒屋の営業には「飲食店営業許可」の取得が必須です。許可を得るには、管轄の保健所が定める施設基準を満たす必要があります。
主な施設基準のポイント
- 二槽シンク:食材洗い用と食器洗い用を分けて設置する
- 専用の手洗い設備:消毒装置付きの手洗いを調理場内に設置する
- 調理場と客席の区切り:スイングドアや仕切りなどで明確に分ける
- 換気設備:調理に伴う蒸気・煙を排出できる設備を設ける
- 温度計付きの冷蔵庫:庫内温度を確認できる機器を設置する
- 扉付きの食器・食品収納:ほこりや害虫から食器・食品を守れる収納を用意する
これらの基準は地域の保健所によって細かい解釈が異なるため、図面の段階で保健所に確認してもらうのが確実です。居抜き物件で既存の厨房機器を活用する場合も、現在の基準を満たしているかを必ず再確認しましょう。
深夜酒類提供飲食店営業の届出と設備上の注意点
居酒屋が深夜0時以降もアルコールを提供して営業する場合は、飲食店営業許可とは別に「深夜酒類提供飲食店営業」の届出が必要です。所轄の警察署(公安委員会)への届出制であり、届出を怠った場合は風営法違反となります。
届出にあたっては、厨房設備そのものの要件はありませんが、客室の構造に関する基準が設けられています。客室の面積が9.5㎡以上であること、見通しを妨げる設備(1m以上の仕切りなど)を設けないこと、照度が20ルクス以上であることなどが主な要件です。
深夜営業を前提とする居酒屋は、内装設計の段階でこれらの構造要件を織り込んでおかないと工事のやり直しが発生するおそれがあるため、早い段階で所轄の警察署に相談しておきましょう。
防火管理者の選任と消防設備の確認
収容人員が30人以上の店舗では、防火管理者の選任が義務づけられています。防火管理者は1〜2日間の講習を受けることで資格を取得できますので、開業前に済ませておきましょう。
また、居酒屋はガスコンロ・フライヤー・焼物器など火気を使用する機器が多い業態のため、消火器の設置や排気ダクトの防火対策など、消防署の指導に基づいた設備確認が必要です。内装工事の着工前に消防署への届出(防火対象物使用開始届)を行い、工事完了後の検査を受ける流れになります。
まとめ:居酒屋の厨房機器は「業態に合った選定」と「メリハリのある投資」がカギ
この記事では、居酒屋開業に必要な厨房機器・設備の完全リストから、業態別の選び方、費用相場、初期費用を抑えるコツ、営業許可の基準までを解説しました。最後に要点を整理します。
この記事のまとめ
- 居酒屋の厨房機器は「加熱調理・冷蔵冷凍・ドリンク酒類・洗浄衛生・作業台収納」の5カテゴリ。加熱・冷蔵・ドリンクの3カテゴリすべてが最重要
- 業態タイプ(焼き鳥・海鮮・創作・小規模)によって優先すべき機器が異なる。自店の看板メニューから機器の優先順位を決める
- 機器選びはメニュー構成→席数→インフラ確認→搬入採寸→新品中古の使い分けの順で判断する
- 居酒屋の開業費用は800万〜2,000万円が相場。厨房機器は全体の20〜30%を占める
- コスト削減には中古厨房機器・居抜き物件・補助金・リースの4つが有効。中古品は新品比30〜70%オフで即納も可能
- 営業許可は飲食店営業許可が必須。深夜0時以降の酒類提供には深夜酒類提供飲食店営業の届出が別途必要
開業資金を賢く使い、厨房機器のコストを抑えることで、開業後の経営に余裕が生まれます。中古厨房機器の導入を検討している方は、ぜひ当サイトの商品ラインナップもご覧ください。動作確認済み・保証付きの中古厨房機器を豊富に取り揃えています。
